SEO・AIO・Web営業
既存のWeb制作会社を変えずに改善を進める方法
診断、仕様化、実装、公開判断、検証の役割を分け、既存の制作会社とWeb改善を進めるためのRACI、受け渡し資料、会議体、意思決定の方法を整理します。
公開日:2026年8月13日 更新日:2026年9月7日 著者:飯田 友広(Tomohiro Iida)
Webサイトの検索表示や問い合わせ導線に課題があると、「制作会社を変えたほうがよいのか」と考えがちです。しかし、問題が制作会社の能力だけでなく、依頼範囲、仕様の粒度、承認経路、公開後の検証担当にあるなら、会社を変える前に進め方を変えられます。
この記事は、既存のWeb制作会社を残したまま、診断、改善仕様、実装、公開判断、公開後の検証を分担する方法を扱います。制作会社の選び方、費用の比較、改善仕様書の14項目そのものは主題にしません。それぞれSEO・Web制作会社の選び方、BtoBサイト改善の費用と90日ロードマップ、Web改善仕様書の書き方へ委譲します。
結論:会社を変える前に、役割と受け渡す単位を分ける
既存の制作会社と改善を進めるとき、最初に決めるのは「誰がすべてを担当するか」ではありません。次の5つを分けます。
- Observe:公開ページ、検索、計測、事業情報から何が起きているかを確認する
- Trace:症状を生んでいる実装・設定・運用上の原因を確認する
- Specify:対象URL、変更内容、完了条件、検証方法へ変換する
- Execute:制作会社や社内担当者が実装し、レビューする
- Verify:本番反映と公開後の観測を行う
1社がすべてを持つ必要はありません。ただし、各工程の責任者、入力、出力、公開判断者が決まっていないと、診断結果が制作会社のタスクへ変わらず、実装後の検証も宙に浮きます。
1. 既存契約の前に「変えないもの」を確認する
制作会社を変えずに進める場合は、新しい支援会社の提案書より先に、現契約と実装環境を確認します。
| 確認項目 | 確認する内容 | 決めること |
|---|---|---|
| 保守範囲 | CMS更新、コード変更、障害対応、サーバー・ドメイン | 今回の改善が契約内か追加見積か |
| 対象環境 | 本番、ステージング、CMS、リポジトリ、タグ管理 | どこで変更・検証するか |
| 公開権限 | 誰がmerge、deploy、DNS、CMS公開を行えるか | 公開作業者と承認者 |
| 既存の約束 | 月次作業、優先順位、納期、素材提供の期限 | 今回の変更との衝突を避ける日程 |
| 成果物 | レポート、デザイン、コード、公開確認、保守記録 | どこまでを既存会社へ渡すか |
「契約内かどうか」を曖昧にしたまま仕様を渡すと、実装直前に追加費用や納期の問題になります。作業範囲を狭めることは可能ですが、誰が残りを担うかを同じ表に書きます。
2. 役割分担表には、各作業の最終責任者を一人置く
RACIは、実行担当(R)、最終責任者(A)、相談先(C)、共有先(I)を分ける方法です。実行担当が複数いても、同じ判定を最終的に引き受ける人は一人にします。会社名だけではなく、役職または担当者まで記録します。
次の表は、顧客の既存制作会社がコードを実装し、外部支援が診断を担う場合の設計例です。「責任者」は説明用の役割名なので、運用時には実際の担当者を指定してください。既存契約の責任範囲を、この表だけで変更するものではありません。
| 作業・判定 | 実行担当(R) | 最終責任者(A) | 相談先(C)・共有先(I) | 完了時に残すもの |
|---|---|---|---|---|
| 事業目標と優先順位の確定 | 顧客Web担当 | 顧客の事業責任者 | C:外部支援・制作会社 | 対象、優先順位、対象外 |
| 診断根拠の品質確認 | 外部支援の分析担当 | 外部支援の品質責任者 | C:制作会社、I:顧客Web担当 | 対象URL、観測日、事実と仮説 |
| 変更仕様と予算の承認 | 顧客Web担当 | 顧客の事業責任者 | C:外部支援・制作会社 | 仕様の版、範囲、受入条件 |
| コード実装と技術テスト | 制作会社の実装担当 | 制作会社の技術責任者 | C:外部支援、I:顧客Web担当 | 変更差分、テスト結果、既知の制約 |
| 本番公開の可否判断 | 顧客Web担当 | 顧客の公開承認者 | C:制作会社・外部支援 | 公開対象、許可範囲、戻す条件 |
| 承認済み変更の公開作業 | 本番操作権限を持つ担当 | 制作会社の公開作業責任者 | I:顧客Web担当・外部支援 | 実際の公開版と実行結果 |
| 公開直後の技術確認 | 制作会社の確認担当 | 制作会社の技術責任者 | C:外部支援、I:顧客Web担当 | 表示・リンク・計測の確認結果 |
| 問い合わせ受信と業務受入 | 顧客Web担当 | 顧客の事業責任者 | C:制作会社・外部支援 | テスト受信、受入可否、残課題 |
一人で実装と技術責任を兼ねる場合も、役割は別に記録します。顧客側が公開作業を担当する契約なら、その行のRとAを顧客側へ置き換えます。Aが空欄の作業は、着手前に責任者を決めます。
技術的に公開できることと、事業上公開してよいことは別の判定です。 一つの「承認済み」で、コード、公開、業務受入をまとめないようにします。外部支援が各工程を当然に代行する表にもしません。担当できる人がいない行は、支援範囲を追加するか、既存の制作会社へ依頼するか、今回は対象から外すかを決めます。
公開前の承認には、対象の版と許可する操作を残す
承認者の名前だけでなく、何を承認したかを記録します。原稿やコードが承認後に変わった場合は、その変更が承認範囲へ入るかを再確認してください。
対象:料金ページの改定
承認対象の版:原稿版またはコードの識別子
許可する操作:合意したページの本番公開
前提:価格正本との一致、日英確認、公開前テスト
公開作業者:契約で指定した担当者
公開可否の最終判断者:顧客の公開承認者
公開後の確認:表示、問い合わせ導線、計測、受信
停止・復旧の条件:価格の不一致、主要導線の障害など
残す結果:実際の公開版、確認日時、未解消事項このメモは、承認対象を整理する説明用の例です。署名や契約の代わりにはなりません。実装担当者が技術テストを通した事実、顧客が公開を承認した事実、公開後の業務受入を、別々に確認できるようにします。
想定外の変更が必要になった場合も、既存の承認を広く読み替えず、範囲と影響を示して判断者へ戻します。料金・業務範囲へ影響しない説明上の修正と、実契約の変更も区別してください。費用の比較方法はBtoBサイト改善の費用と90日ロードマップ、技術的な公開後確認はWebサイト公開後の検証チェックリストで扱います。
3. 制作会社へ渡す資料を一つの受け渡し単位にする
制作会社に「SEOを改善してください」と依頼すると、相手は対象ページ、変更範囲、優先順位、完了条件を確認し直す必要があります。次の情報を、課題1件ごとの受け渡しパケットにします。
- 課題IDと対象URL
- 観測された症状と確認した事実
- 実装上の原因と、まだ仮説である箇所
- 変更後の文言、構造、コード、設定の案
- 触ってよい範囲と触ってはいけない範囲
- 優先度、担当、期限、依存する作業
- 本番公開前の確認項目と、公開後の再確認日
- 必要な権限と、権限を持つ担当者
改善仕様書の様式をそのまま運用に使う場合は、Web改善仕様書の書き方を参照します。この記事で重要なのは様式の再解説ではなく、既存の制作会社へ渡す前に、誰が判断し、誰が実装し、誰が確認するかを合わせることです。
4. 会議は「相談」ではなく意思決定の場にする
既存会社との定例会議が長くても、課題の担当と期限が決まらなければ改善は進みません。会議ごとに扱う情報を固定します。
着手会議で決めること
- 今回のリリースに含める課題ID
- 対象URLと対象外URL
- 実装方法の決定期限
- 仕様差分が出たときの判断者
- 本番公開日と、公開停止の判断基準
- 公開直後に確認する人と確認方法
実装レビューで確認すること
- 仕様の変更内容が本番コード・CMS・タグ設定に反映されているか
- 日本語と英語、PCとスマートフォンの表示が揃っているか
- metadata、canonical、構造化データ、内部リンクが想定どおりか
- CTA、フォーム、GA4イベントが重複せず動くか
- 変更対象外のページに意図しない影響がないか
公開後会議で確認すること
- 本番HTML、status、redirect、sitemapの確認結果
- フォーム受信とGA4イベントの照合
- Search Consoleの取得状態
- 未完了の課題、次の期限、判断が必要な事項
会議の議事録には、決まったことだけでなく、決めなかったことと、その理由も残します。未確認のまま進めた場合は、確認担当と期限を置きます。
5. 既存制作会社との衝突を減らす3つの原則
原則1:実装方法を一方的に指定しない
診断側が「このコードに変えてください」と断定しても、既存のCMS、フレームワーク、デプロイ制約に合わないことがあります。診断側が固定するのは、目的、対象、確認事実、完了条件です。実装方法は制作会社が環境を確認したうえで提案し、差分が出たら判断者が承認します。
原則2:既存会社を競合相手として扱わない
診断、仕様化、実装、公開後確認は別の能力です。既存会社が本番実装を担うなら、仕様と検証を受け渡す相手です。制作会社の実装知識を前提にしつつ、検索・計測側の確認事実を不足なく渡します。
原則3:成果ではなく、完了と観測を分ける
本番HTMLに変更が反映されたことは、実装の完了です。検索順位、AI検索での表示、問い合わせ数の変化は、公開後の観測です。外部要因があるため、観測結果を制作会社の成果保証として扱いません。
6. うまく進まないときの切り分け
| 詰まり方 | まず確認すること | 次の対応 |
|---|---|---|
| 仕様への質問が多い | 対象URL、変更内容、完了条件が揃っているか | 1課題1URLに分割する |
| 見積もりが会社ごとに違う | 調査・実装・検証の範囲が同じか | 範囲表を並べて比較する |
| 実装が保留になる | RACIのRとA、必要権限、承認者 | 未決定を課題化し期限を置く |
| 公開後に問題が見つかる | 公開直後の検証手順と担当 | リリースチェックを必須化する |
| 数値が変わらない | 基準値、比較期間、同時変更 | 観測と因果の記録を分ける |
| 会社を変える話に戻る | 問題が能力か、役割・契約・仕様か | まず1件だけ分担で試す |
1件の改善を分担して公開し、受け渡しの往復、実装の遅れ、公開後の検証漏れを記録すると、契約を変えるべきかを感情ではなく事実で判断できます。
よくある質問
既存の制作会社がSEOに詳しくなくても進められますか?
進められます。検索・計測側が確認事実と完了条件を整理し、制作会社が実装方法と影響範囲を判断する分担にします。仕様を「SEOを改善する」で止めないことが前提です。
既存制作会社にすべての権限を渡す必要がありますか?
必要ありません。作業に必要な範囲だけ、担当者・期間・環境を分けて付与します。GA4、Search Console、CMS、GitHubの権限設計はWeb改善支援にどこまで権限を渡すべきかで整理しています。
SIGNALが既存制作会社の代わりに実装する記事ですか?
代わりにすることを前提にしていません。契約範囲に応じて、公開情報の診断、改善仕様、実装支援、公開後の検証を分担します。実装担当と公開判断者は、案件ごとに明示します。
まとめ
既存のWeb制作会社を変えずに改善を進めるには、次の順で整えます。
- 現契約、環境、権限、公開経路を確認する
- Observe、Trace、Specify、Execute、Verifyを工程として分ける
- RACIで実行担当と最終責任者を固定する
- 課題1件ごとに、対象URL・事実・変更・完了条件・検証を渡す
- 会議を意思決定と期限の場にする
- 実装の完了と、公開後の効果観測を分ける
制作会社を変える判断が必要なケースもあります。ただし、契約や能力の問題と、受け渡し・責任者・検証の問題を分けて確認してから判断します。SIGNALの無料診断では、公開情報をもとに最初に確認すべき課題を整理します。検索順位、AI回答への掲載、問い合わせ数を保証するものではありません。
この記事の著者

飯田 友広
代表取締役
Netsujo株式会社 代表取締役。京都発のWeb3・AI実装スタートアップを2023年6月に創業。Webサイトを営業基盤として捉え、経営・営業・検索・生成AI・コンバージョン・計測を横断して課題と改善優先順位を整理する「Netsujo SIGNAL」を設計・運営。さらに、ChatGPT・Codex・Claude Codeを状態再構築、競合回避、独立QC、Exact-head検証、停止、復旧まで含む制御ループで運用する社内AI開発基盤「Netsujo Agent OS」を設計・実運転。Netsujoとして京都ビッグデータ活用プラットフォームに参画(小規模企業会員(ベンチャー))し、同プラットフォーム発のワーキンググループ「Chain Up KYOTO」にも参画(2026年3月10日〜)。IVS2026サイドイベント「なぜ京都でWeb3.0ビジネスなのか」はNetsujoとして京都府庁旧議場で主催・企画・登壇・運営(2026年7月2日/京都府 総合政策環境部 デジタル政策推進課は共催)。京都美術工芸大学・龍谷大学での講義に加え、京都高度技術研究所(ASTEM)、旅館業界、就労支援施設、Open Source Conference等で登壇実績。ITコミュニティ「みやこでIT」(connpassメンバー637名・イベント174件・2019年2月から運営)運営。NPO法人NEMTUS理事、BAR KRYPTO運営。Netsujoはソーシャル企業認証制度「S認証」の認証企業(2026年2月認証・2026年4月公表)。技術領域はWeb3/ブロックチェーン/DID/NFT/生成AI/コミュニティ運営。
プロフィールを見るこの記事が向いている方
既存の制作会社と契約を続けながら改善したい担当者
SEOや計測の診断結果を制作会社へ渡す方
実装・公開・検証の責任者を決めたい責任者
関連するサービス
Web営業基盤|Netsujo SIGNAL
既存の体制で、最初の改善を進める
診断、仕様化、既存制作会社との分担、公開後の検証まで、契約範囲に応じて整理します。検索順位やAI掲載を保証するものではありません。