AI開発
AIにWeb改善を任せたあと、何をもって「完了」とするか
SIGNALとARC、2026年10月の改善記録
著者:飯田 友広(Tomohiro Iida)

この記事の結論
AI委任を顧客成果につなぐには、目的・権限・作業実施・観測・効果を分けて受け入れる。
エージェントのPASSは宣言の整合性を示すだけで、外部で起きた効果の証拠にはならない。
2026年10月27日、SIGNAL本番の読み取り専用確認で、承認済みの目的と保存済みの課題は読めた。実装と成果の観測行は見つからなかったが、サイトが変わっていない証明ではない。
観測の返送や版を指定した受け入れを含むSIGNAL #778は10月27日23時53分(JST)に、集計の#777は10月28日0時4分(JST)にmergeされ、10月28日8時19分(JST)に本番デプロイされた。本番での稼働と顧客の受け入れは未確認である。
ARCの合成ケース18件、設計、署名検証のオフラインテストは検証の途中経過であり、顧客事例、証明済みの保証、実行時の権限ではない。
AIにWebサイトの改善を任せると、診断は速く出てくる。問題は、実装したあとに起きる。変更が本当に入ったのか、その後に検索や問い合わせの数字がどう動いたのかが、依頼した側の手元に戻ってこないことがある。エージェントが「PASS」と報告していても、それは外の世界で何かが起きた証拠にはならない。
この記事は、Netsujo SIGNALとAgent Role Contracts(ARC)の2026年10月の改善記録だ。結論は、AIへの委任を顧客の成果につなげるには、目的・権限・作業の実施・観測・効果を分けて受け入れる、ということである。技術的な観測は10月27日のもの、mergeと本番の状況は10月28日8時20分(JST)時点のものだ。顧客への影響や、顧客をまたいだ学習への同意を主張するものではない。
SIGNALが目指すもの
Netsujo SIGNALは、企業サイトの購入検討者が、見つけ、理解し、比較し、自分に合うかを判断して、問い合わせや注文に進めるようにするためのサービスだ。診断はコードレベルまで踏み込み、実装できる変更仕様(ChangeSpec)まで出す。SEOやAIOは、この目的のための手段だ。詳しくはSIGNALのサービスページにある。
1. 目的を先に固定する
最初に分けるのは目的だ。「検索順位を上げる」と「比較検討中の人が自分に合うと判断できる」は、同じ作業とは限らない。SIGNALはワークスペースに承認済みの目的を持たせ、検出した課題を結びつけて保存する。10月27日、自社の2サイトで本番のget_workspace(読み取り専用)を呼び、承認済みの目的と保存済みの課題が読めることを確認した。
2. 権限は別の文書で見る
ARCは、役割・書き込み範囲・引き継ぎ・レビューの宣言を、実行の前にオフラインで検査する。v1.0.0は公開リポジトリで安定版として公開している。ここで注意したいのは、PASSの範囲だ。PASSは宣言に矛盾がないことしか示さない。実行者が誰か、ツールの権限が実際にどう設定されているか、現実に何が起きたかは証明しない。詳細はPASSの意味を扱った記事に譲る。
ARCの10月27日の動きは4つある。PR #81で、オフラインの合成ケース18件の比較をmergeした。これは18社の顧客事例ではなく、人工的に作ったケースだ。PR #82では、タスク権限の保証についての設計をmergeした。これは設計であって、数学的に証明されたものではない。PR #83は外部からの意見を受けた統合設計の見直しで、これも設計のみをmergeした。PR #84は、承認の受領書に付いたEd25519署名と対象の現在性を検証する処理を、範囲を絞ってオフラインのテストで確かめた。実行時の権限を与えるものではない。
3. 作業の実施は、報告と別に観測する
ここが今回いちばん手応えのあった部分だ。ローカルの未公開コミット(88220a9、公開リポジトリにはmergeしていない)で、架空の50バイトの「読み取り→送信」を、ループバックの受信側に対して試した。正常時は204が返る。受信側がすでに1件を記録したあとにHTTP 404が返る場合を作り、さらに送信を拒否する場合も作った。同じ処理を再実行しても、1つのプロセス内では受信側の記録が重複しなかった。
これは、送信側の「失敗した」という報告と、受信側の「1件記録された」という事実がずれうることを小さく確かめたものだ。外部APIでの厳密な1回実行(exactly-once)を示すものではなく、ARCが本番で実行を強制している証拠でもない。ARCの実行時の仕組みがSIGNALに技術的に組み込まれている、ということも主張しない。持ち帰ったのは設計の考え方だけだ。報告と観測は別の行に書く。
4. 観測が戻ってきていない
SIGNALの本番を同じ日に確認したところ、実装が観測されたことを示す行と、成果が観測されたことを示す行が見つからなかった。これは「サイトが変わっていない」という証明ではない。変更が行われていても、SIGNAL側に記録が返っていないという意味だ。診断までは出るのに、そのあとが空白になっている。この空白が、今回いちばん直したい点だった。
続く改善は、SIGNALのPR #778に入っている。実装の報告・訂正・撤回、ポータルでの版を指定した受け入れ、計測の帰属、顧客ごとに閉じた学習が含まれる。このPRは、独立したコードレビューとCIを経て、10月27日23時53分(JST)にmergeされた。集計の#777も10月28日0時4分(JST)にmergeされ、両方を含む本番デプロイは10月28日8時19分(JST)に完了した。ただしデプロイの完了は、コードが本番に置かれたという意味にとどまる。観測を返すこの仕組みが本番で実際に動き、実装と成果の行が埋まるかどうかは、まだ確かめられていない。人による受け入れや、顧客が受け入れたという記録もない。
5. 効果は、最後に別に問う
実装が確認できても、検索の表示や問い合わせが増えたかは別の問いだ。実装した版と計測期間を結びつけないと、変化の理由を決められない。だから受け入れを分ける。目的は合っているか、権限は適切か、作業は行われたか、観測は返ってきたか、効果はあったか。1つが済んでも、残りが済んだことにはならない。
次にやること
SIGNAL側は、本番に置かれた#778と#777が実際に動くかを確かめ、本番の読み出しで実装と成果の行が埋まることを確認する。ARC側は、設計を証明やテストで裏づけられる範囲だけ進める。ARCとSIGNALは審査の原則を共有するが、技術的に統合されてはいない。確認できたことだけを公開する。
AIに改善を任せるなら、実装後に何が戻ってくるかを先に決めておくと、完了の基準が定まる。SIGNALの無料診断で現状を確認できる。ARCは公開リポジトリから試せる。
この記事の著者

飯田 友広
代表取締役
Netsujo株式会社 代表取締役。Technical BizDev / AI Deploymentとして、顧客の業務課題、AI適用領域、PoC、実装チームとの要件、本番導入後の評価をつなぐ。京都発のWeb3・AI実装スタートアップを2023年6月に創業。Webサイトを営業基盤として捉え、経営・営業・検索・生成AI・コンバージョン・計測を横断して課題と改善優先順位を整理する「Netsujo SIGNAL」を設計・運営。さらに、ChatGPT・Codex・Claude Codeを状態再構築、競合回避、独立QC、Exact-head検証、停止、復旧まで含む制御ループで運用する社内AI開発基盤「Netsujo Agent OS」を設計・実運転。Netsujoとして京都ビッグデータ活用プラットフォームに参画(小規模企業会員(ベンチャー))し、同プラットフォーム発のワーキンググループ「Chain Up KYOTO」にも参画(2026年3月10日〜)。IVS2026サイドイベント「なぜ京都でWeb3.0ビジネスなのか」はNetsujoとして京都府庁旧議場で主催・企画・登壇・運営(2026年7月2日/京都府 総合政策環境部 デジタル政策推進課は共催)。京都美術工芸大学・龍谷大学での講義に加え、京都高度技術研究所(ASTEM)、旅館業界、就労支援施設、Open Source Conference等で登壇実績。ITコミュニティ「みやこでIT」(connpassメンバー639名・イベント176件・2019年2月から運営)運営。NPO法人NEMTUS理事、BAR KRYPTO運営。Netsujoはソーシャル企業認証制度「S認証」の認証企業(2026年2月認証・2026年4月公表)。技術領域はWeb3/ブロックチェーン/DID/NFT/生成AI/コミュニティ運営。
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AIにWeb改善を任せ、実装後の完了基準を決めたいWeb担当者
AIの報告と外部での観測を分けて受け入れる運用を設計したい技術リード
SIGNALの診断から実装、効果測定までの流れを確認したい検討担当者
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Q. AIが実装完了と報告したら、完了としてよいのか
報告は実装の観測、成果の観測とは別の行で確認します。受け入れを目的・権限・実施・観測・効果に分けます。
Q. SIGNALのPR #778は使えるのか
10月27日23時53分(JST)にmergeされ、10月28日8時19分(JST)に本番デプロイされました。本番での稼働と顧客の受け入れは確認できていないため、提供済みとは扱いません。
Q. ARCの18件は顧客事例か
いいえ。オフラインの合成比較ケース18件で、顧客事例ではありません。
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