
不動産RWA(セキュリティトークン)の日本での実例と規制
2026年最新版・国内主要事例と制度整理
— 1行で答えると
日本の不動産RWA(セキュリティトークン)は、Progmat ST(三菱UFJ信託銀行発)と ibet for Fin(BOOSTRY)などの有力基盤を中心に、金商法ベースのスキームで市場形成が進んでいます。本記事では、代表案件・主要基盤・法規制・導入プロセスを、事業化検討に使える粒度で整理します。
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国内不動産ST代表案件
2026年2月時点の国内ST市場は、発行累計額3,552億円、累計案件数84件規模に到達しています。ここでは直近の代表案件を3つ取り上げます。
MUFGリアルティ・トークン大阪堂島浜タワー
発行体: 合同会社コースト/三菱UFJ信託銀行/三菱UFJ不動産投資顧問/野村證券ほか
MUFG一体で取り組む不動産STとしては初。大阪堂島浜タワーの不動産信託受益権準共有持分を信託財産とする受益証券発行信託スキーム。
KJRM・リアルティ・トークン 汐留シティセンター
発行体: KJRマネジメント/三菱UFJ信託銀行
セキュリティトークンの公募での発行額として国内過去最大規模とされた案件。
学生レジデンスST
発行体: 三菱UFJ信託銀行/大和証券ほか
学生レジデンスを投資対象とした不動産STの公募・発行事例。2025年12月案件としては確認できないため、確認可能な公表時期に修正。
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主要プラットフォーム比較
主要基盤は、発行実績・参加金融機関・利用するブロックチェーン基盤に違いがあります。代表的な2つを比較します。
Progmat ST
Progmat, Inc.
累計 2,314億円・45案件(2026年2月時点)
基盤: Corda5ベース。2026年6月末を目処にAvalanche L1へ移行予定
三菱UFJ信託銀行発の国内有力ST基盤。信託銀行・証券会社・運用会社などが参加し、国内ST市場で発行累計額・取扱案件数ともにトップシェア。
ibet for Fin
BOOSTRY(野村HD・NRI・SBI HD・JPXが出資)
国内公募ST市場は累計約5,300億円規模を予測(2026年度末・BOOSTRY予測)
基盤: GoQuorum(Ethereum派生のコンソーシアム型ブロックチェーン)
金融機関を中心とした業界横断コンソーシアムが運営。2025年1月時点で共同運営20社規模。
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3つのスキーム比較
不動産トークン化には、適用法令の異なる3つの主要スキームがあります。事業規模と投資家層で使い分けます。
| スキーム | 適用法令 | 対象権利 | 必要許認可 |
|---|---|---|---|
| 電子記録移転権利(ST)スキーム | 金商法(電子記録移転有価証券表示権利等) | 受益証券発行信託 / 集団投資スキーム持分等 | 第一種金融商品取引業 |
| 不動産特定共同事業法(不特法)スキーム | 不動産特定共同事業法 | 匿名組合出資・任意組合持分等 | 不動産特定共同事業者の許可 |
| みなし有価証券スキーム | 金商法(みなし有価証券) | 集団投資スキーム持分 | 第二種金融商品取引業 |
電子記録移転権利(ST)スキーム
不動産信託受益権を裏付け資産にトークン化する形式。大型案件はほぼこのスキーム。
不動産特定共同事業法(不特法)スキーム
小〜中規模案件・地方案件で採用。デジタル化が進む(電子取引業務)。
みなし有価証券スキーム
クラウドファンディング型案件で用いられる。私募中心の発行に向く。
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導入5ステップ
対象不動産の選定とスキーム判断
物件種別(オフィス/住宅/学生レジデンス/物流施設等)、信託組成可否、想定投資家層から、STスキームか不特法スキームかを判断します。大型機関投資家向けはST、地域案件は不特法が現実的です。
信託組成・受益権設計
信託銀行と連携し、不動産を信託財産として受益権を発行します。Progmat ST や ibet for Fin 上でトークン化する場合、信託銀行・証券会社・原簿管理関係者・プラットフォーム提供者の役割分担を整理し、権利者管理、譲渡制限、分配、償還の運用フローを設計します。
プラットフォーム選定とトークン発行
Progmat ST・ibet for Fin など既存プラットフォームを利用する場合、発行体が独自スマートコントラクトを一から開発しないケースが多くなります。KYC、譲渡制限、原簿管理、分配、償還、障害時対応を含めて、既存基盤の仕様に合わせた実務設計を行います。
販売・募集
第一種金融商品取引業者(証券会社)と連携し、私募または公募で募集を行います。プロ私募・適格機関投資家私募・一般公募で開示書類と販売対象が異なるため、初期に方針を確定する必要があります。
二次流通・運用
PTS(私設取引システム)や対面取引による二次流通の経路を確保します。2025年以降、ODX(大阪デジタルエクスチェンジ)などの稼働で二次流通の選択肢が拡大しています。
Netsujo のサポート
Netsujo は、構想整理(STかST以外か・どのプラットフォームか・どの信託銀行・証券会社と組むか)の壁打ちを実装型BizDevとしてサポートしています。RWA全体像は RWAトークン化の基礎をご覧ください。
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よくある質問(FAQ)
Q1日本で不動産RWA(ST)を発行している主要プラットフォームは?
日本で不動産RWA(ST)を発行している主要プラットフォームは?
代表的な基盤として、Progmat ST(三菱UFJ信託銀行発)と ibet for Fin(BOOSTRY)が挙げられます。Progmat STは発行累計額・案件数で国内トップシェア、ibet for Finは金融機関を中心としたコンソーシアム型基盤として展開されています。
Q2不動産STと不特法(不動産特定共同事業法)スキームの違いは?
不動産STと不特法(不動産特定共同事業法)スキームの違いは?
適用法令と必要許認可が異なります。STは金商法ベースで、発行・募集・販売には金融商品取引業者や信託銀行などとの連携が前提になります。不特法は不動産特定共同事業法に基づくスキームで、不動産特定共同事業者の許可・登録を前提に、小〜中規模案件や地域案件で使われることがあります。
Q3個人投資家でも不動産STを買えますか?
個人投資家でも不動産STを買えますか?
公募STであれば一般個人投資家も購入可能です。実際に、大阪堂島浜タワー案件では野村證券および三菱UFJモルガン・スタンレー証券が引受人となり、1口100万円で発行されています。一方、私募STは投資家属性や販売対象が限定されます。
Q4小口投資の最低金額はいくらですか?
小口投資の最低金額はいくらですか?
案件によります。一般公募STでは1口10万円〜100万円程度の事例が確認できます。不特法スキームの不動産クラウドファンディングでは、より小口で参加できる案件もあります。
Q5不動産STの利回りはどのくらいですか?
不動産STの利回りはどのくらいですか?
案件・物件種別・運用期間によって異なります。予定分配利回りは個別案件の開示資料で確認する必要があり、「国内不動産STは一律で年利4〜6%」のような断定は避けるべきです。流動性・譲渡制限・運用期間・早期償還条件もあわせて確認します。
Q6不動産STと J-REIT の違いは何ですか?
不動産STと J-REIT の違いは何ですか?
J-REITは上場市場で日々売買できる流動性の高い投資商品です。不動産STは個別物件または特定ポートフォリオを裏付けに発行されることが多く、対象資産への投資感覚を持ちやすい一方、二次流通や譲渡制限は案件ごとに異なります。利回りだけでなく、流動性・最小投資単位・対象資産の透明性で比較します。
Q7中小不動産会社でも参入できますか?
中小不動産会社でも参入できますか?
STスキームは信託・証券・原簿管理・販売体制などの要件が重いため、単独参入は難易度が高いです。既存基盤に関わる信託銀行・証券会社・運用会社と組むか、不特法スキームや不動産クラウドファンディングから始める選択肢があります。
Q8不動産STのスマートコントラクト監査は必要ですか?
不動産STのスマートコントラクト監査は必要ですか?
Progmat ST・ibet for Fin など既存基盤を使う場合、発行体が案件ごとに独自スマートコントラクトを開発するケースとは前提が異なります。ただし、基盤リスク、権利者管理、KYC、譲渡制限、募集要項、信託契約、障害時対応などの業務・法務・運用面の確認は必要です。
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