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市場動向最終確認日:2026-08-05約12分で読める

Web3市場動向2026

— 制度・実装・資金・企業採用を一次情報で確認する

本記事が参照する国内金融領域の一次情報を見る限り、2026年のWeb3は、「新しいトークンを作る競争」から「既存の権利・金融・業務をどこまで安全にオンチェーン化できるか」へ論点が移りつつあります。

暗号資産価格や話題性だけを見ても、企業が参入すべき領域は判断できません。制度、取引主体、決済、本人確認、運用責任、二次流通まで含めて設計できる領域で、実装が進んでいます。本記事では、2026年8月時点で確認できる一次情報をもとに、日本企業が見るべき変化を整理します。

この記事の要点

  • 日本のセキュリティトークンは制度開始から運用段階へ進みました。市場を評価する材料は、プレスリリースの件数ではなく、業界団体が月次で公表している取扱状況の継続統計です。

  • 重要な論点の1つは、決済資産との接続と、本人確認済みウォレットの扱いです。技術的にトークンを発行できても、市場設計と決済設計がなければ、継続的な流通は成立しにくくなります。

  • 企業側の判断は、権利・関係者・信頼・規制・運用・経済性・検証の順で進めます。技術選定から入ると、撤退基準のないPoCになりやすいためです。

  • この記事は2026年8月5日時点で確認した一次資料にもとづく整理です。統計は2026年6月1日公表の2026年4月分を参照しており、市場規模の推計値や将来予測は扱いません。対象読者は、Web3の導入可否をこれから社内で判断するBtoB企業の担当者です。

— 01

セキュリティトークンは制度開始から運用段階へ進みました

日本では、2020年5月の改正金融商品取引法施行により、電子記録移転有価証券表示権利等、いわゆるセキュリティトークンの制度が整備されました。2026年には制度開始5周年を迎え、日本STO協会は市場の歩みと今後の課題を整理する記念イベント(2026年2月20日開催)を開催しています。

市場の成熟度を判断するうえで重要なのは、発行事例の有無だけではありません。次の観点が揃っているかを見ます。

  • 金融商品取引業者が扱えるか
  • 投資家保護のルールがあるか
  • 発行後の権利者管理ができるか
  • 税務・会計・開示へ対応できるか
  • 二次流通の場があるか
  • 決済と権利移転をどのように同期するか

日本STO協会と日本証券業協会は、トークン化有価証券や電子記録移転権利の取扱状況を月次で公表しています。2024年4月分から公表が始まり、原則として毎月1日に両協会のサイトへ掲載される継続統計です(日本STO協会「取扱状況等について(2026年4月分)」・2026年6月1日公表)。市場を評価する場合は、プレスリリースの件数ではなく、発行額、償還、保有、流通、商品種別などの継続統計を確認する必要があります。

制度そのものの整理は日本のSTO規制と金商法対応の実務に、国内の不動産案件については不動産RWAの日本の実例と規制にまとめています。

— 02

対象資産は不動産から債券・ファンド・株式・国債へ広がっています

初期の国内セキュリティトークンでは、不動産や受益証券発行信託を活用した商品が多く見られました。現在は、債券、PE・VCファンド持分、株式、国債など、より広い有価証券がトークン化の対象として論じられています。このうち株式と国債については、2026年に具体的な検討状況が公表されています。

2026年には、トークン化株式のスキームオプションと論点(Progmat・2026年4月)や、トークン化国債を使ったオンチェーン・レポ取引の共同検討開始(Progmat・2026年5月8日)も公表されています。

ここで注意したいのは、「資産をトークンに変えれば流動性が生まれる」という受け止め方です。流動性には、次の条件が必要です。

  • 売買へ参加できる投資家
  • 価格形成の仕組み
  • 注文を取り次ぐ事業者
  • 決済資産
  • 権利移転の法的効力
  • カストディと鍵管理
  • 継続的な情報開示
  • 売却時の税務と会計

技術的にトークンを発行できても、市場設計がなければ、継続的な流通は成立しにくくなります。トークン化の対象と仕組みの基礎はRWA(実物資産トークン化)の仕組みと日本の規制に整理しています。

— 03

決済資産との接続が次の論点になっています

証券や実物資産の権利だけをオンチェーン化しても、決済が従来の銀行送金や別システムに残ると、取引全体は分断されます。2026年には、セキュリティトークンとステーブルコイン、トークン化預金、デジタルマネーを組み合わせ、権利移転と資金決済を近づける検討の公表が出ています。

企業が見るべき論点は、チェーンの速度ではありません。次の項目です。

  • どの資産で決済するか
  • 誰が発行・償還するか
  • 法定通貨との交換条件
  • 決済失敗時の復旧
  • 取引と決済の同時性
  • AML/CFT
  • 会計上の残高確認
  • 稼働時間と保守責任

オンチェーン化の価値は、台帳を変えることより、権利・資金・業務の照合を減らせるかで評価します。この判断軸はWeb3とブロックチェーンの本質的価値と実装条件でも扱っています。

— 04

KYC済みウォレットとAMLが実証で検証されています

金融庁は2026年3月13日、KYCが行われたことを示すアドレスに紐づくウォレットを使い、暗号資産、電子記録移転有価証券表示権利等、電子決済手段を模したトークンの取引と、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与に関するリスク低減措置を検証したFinTech実証実験ハブの実験結果(第10号案件)を公表しました。

この動きが示すのは、金融領域で「匿名性を高めること」が価値の中心ではないということです。制度下の実装では、次を両立させる必要があります。

  • 取引主体を確認できる
  • 権限を持つウォレットを識別できる
  • 不正な資金移動を検知できる
  • 必要な範囲でプライバシーを守る
  • 規制対象者が監督できる
  • インシデント時に停止・凍結・復旧できる

DIDやVC、アドレス証明などの技術は、規制を回避するためではなく、確認済みの属性を必要な相手へ安全に示すために使われます。それぞれの仕組みはDID(分散型ID)の仕組みと活用事例Verifiable Credentials(VC)の実装ガイドで扱っています。

— 05

Web3とAIの接点は、実行権限の管理です

AIエージェントにウォレットを持たせ、支払い、交換、契約実行まで任せる構想が語られるようになりました。ただし、AIがオンチェーン取引を実行する場合、誤回答が文章で終わらず、資産移転になります。重要なのは、自律性の高さではなく、権限の境界です。

  • 読み取りだけか
  • 取引案を作るだけか
  • シミュレーションまで行うか
  • 人間承認後に署名するか
  • 金額上限と送付先制限があるか
  • 緊急停止できるか
  • 監査ログを残せるか

AIとWeb3を組み合わせる企業は、ユースケースの魅力より先に、署名、鍵、承認、責任を設計する必要があります。企業側の活用パターンはAIとブロックチェーンの企業活用に、権限と承認をどう運用に落とすかはAIエージェントで会社を回すNetsujoの運用OSに整理しています。

— 06

DePINはハードウェア運用と採算が分岐点です

DePINは、センサー、通信、電力、ストレージなどの物理インフラを分散型の参加構造で運営する枠組みです。一方で、トークン設計だけでは実装できません。次の要素が現実の運用に残ります。

  • 機器の調達と設置
  • 電源と通信
  • 故障・交換
  • データ品質
  • 不正な観測
  • 参加者への報酬
  • 利用者と支払者
  • 保守主体
  • 撤退時の回収

実証では、トークン価格より、1地点あたりの総保有コスト、観測精度、保守頻度、誰が費用を払うかを確認します。当社が進めるYaseiGridでも、構想と検証済み事実を分けて公開する方針です。現時点の状況はYaseiGrid R&Dの現在地、事業構想はDePINの現在地とYaseiGridで目指すWeb3インフラ事業に公開しています。

— 07

企業が2026年に確認すべきこと

Web3の導入を検討する企業は、次の順序で判断してください。技術選定から入らないことが、撤退基準のないPoCを避ける実務的な進め方です。これは当社が案件で使っている手順であり、唯一の正解ではありません。

  1. 1権利何をデジタル化するのか。所有権、受益権、会員権、利用権、証明、ポイントのどれかを先に決めます。
  2. 2関係者発行者、利用者、販売者、管理者、監督者、保守者は誰かを洗い出します。
  3. 3信頼誰か一社のデータベースでは解決できない理由があるか。複数組織間で共通台帳が必要かを確認します。
  4. 4規制金融商品、暗号資産、電子決済手段、前払式支払手段、個人情報など、どの制度が関係するかを特定します。
  5. 5運用鍵を失った場合、不正取引が起きた場合、組織が撤退した場合にどうするかを決めます。
  6. 6経済性トークンを発行することではなく、業務コスト、利用価値、流通、継続収益が成立するかを見ます。
  7. 7検証PoCで何を測り、どの条件なら本番へ進み、どの条件なら止めるかを着手前に決めます。

判断基準の詳細はWeb3は本当に必要か?導入判断の5つの基準、要件の落とし方はWeb3の要件定義チェックリスト、撤退基準の決め方はPoCを始める前に決めるべき撤退基準にまとめています。

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2026年の結論

本記事で参照した国内の公表資料を見る限り、Web3は、万能な分散化を競う段階から、制度と既存業務へ接続できる領域を選ぶ段階へ移りつつあります。企業にとっての機会は、「ブロックチェーンを使うこと」ではありません。

  • 複数組織が同じ権利状態を確認できる
  • 権利移転と決済を連動できる
  • デジタル資産を規制下で流通できる
  • 確認済みの属性を安全に提示できる
  • 機械やAIが限定権限で取引できる

こうした条件が事業課題と一致する場合に、Web3は実装候補になります。当社では、技術選定から入らず、権利、関係者、規制、運用、採算、撤退基準を整理したうえで、PoCと本番実装を設計します。

この記事の著者

飯田 友広

飯田 友広

代表取締役

Netsujo株式会社 代表取締役。京都発のWeb3・AI実装スタートアップを2023年6月に創業。Webサイトを営業基盤として捉え、経営・営業・検索・生成AI・コンバージョン・計測を横断して課題と改善優先順位を整理する「Netsujo SIGNAL」を設計・運営。京都ビッグデータ活用プラットフォーム参画(小規模企業会員・ベンチャー)、同プラットフォーム発のワーキンググループ「Chain Up KYOTO」参画(2026-03-10)、IVS2026サイドイベント「なぜ京都でWeb3.0ビジネスなのか」を京都府庁旧議場で開催(2026-07-02・Netsujoとして主催、企画・登壇・運営/京都府デジタル政策推進課は共催)。京都美術工芸大学での講義・龍谷大学でのセミナー実績、ITコミュニティ「みやこでIT」(connpassメンバー614名・イベント167件・2019年2月から運営)運営。NPO法人NEMTUS理事、BAR KRYPTO運営。ソーシャル企業認証「S認証」認証企業(2026年2月認証・2026年4月公表)。技術領域はWeb3/ブロックチェーン/DID/NFT/生成AI/コミュニティ運営。

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この記事が向いている方

  • Web3の導入可否をこれから社内で判断するBtoB企業の担当者

  • セキュリティトークンやトークン化資産の国内動向を、一次情報で確認したい方

  • AIエージェントにオンチェーン取引を任せる前に、権限設計の論点を押さえたい方

— 壁打ち相談

読者のよくある相談

記事を読んだ後に「自分の状況だとどう判断すべきか」を整理するための壁打ち相談を受け付けています。下記のような相談例が当てはまる方は、お気軽にご連絡ください。

Q. 自社の課題は、そもそもWeb3で解くべきものですか?

権利・関係者・信頼・規制の4点から、共通台帳が必要な理由があるかを一緒に確認します。

Q. PoCはどこまでやれば本番判断ができますか?

着手前に測る指標と、進む条件・止める条件をセットで決めます。

Q. 規制対応まで含めて相談できますか?

関係しうる制度の洗い出しまでを設計に含めます。法令の最終判断は専門家と連携して進めます。

上記いずれかが該当する場合、初回30分の壁打ち相談で論点整理に対応します。記事に書ききれない個別事情を踏まえた判断材料が必要な段階こそ、壁打ちが活きやすいフェーズです。

構想段階でもお気軽に

Web3の構想・PoCについて相談する

権利、関係者、規制、運用、採算、撤退基準を整理したうえで、PoCと本番実装を設計します。要件が固まっていない段階でも構いません。

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